肉芽腫症のイサキから分離された細胞内寄生細菌
養殖研究所・病理部
[連絡先]0599-66-1830
[推進会議]水産養殖関係試験研究推進会議
[専門]病理
[研究対象]細菌類
[分類]研究
[ねらい・目的と成果の特徴]
・イサキの養殖では肉芽腫症を伴う細胞内寄生細菌による疾病が養殖業普及の大きな阻害要因となっている。しかしこの細菌は一般的な細菌培養方法および培養細胞を用いた分離培養は不可能であった。分子生物学的手法を用いてこの細菌の系統関係を推定した結果、野兎病の原因菌と近縁であると推定された。そこで野兎病菌の分離培養方法を参考に、この細菌の分離培養を試みた。
[成果の活用面等]
・イサキの病原体の分離培養法を確立し、病原体の特質を明らかにして、本疾病の診断と防除に貢献する。
[具体的データ]
材料と方法
愛媛県で2001年に肉芽腫症を示し,へい死したイサキの腎臓・脾臓を,1% (W/V)
ヘモグロビン含有シスチン・ハート・アガー培地 (ディフコ製)
に塗布して,25℃2週間,分離を試みた。分離された細菌4株について,小サブユニットリボソームRNA(16S
rRNA)の配列を決定した。分離された一菌株については,イサキ健常魚の腹腔内に注射して感染実験を行った。
結果と考察
図1 イサキ病魚から野兎病菌の培地を用いて分離された細菌.
愛媛県で2001年に肉芽腫症を示し,へい死したイサキの脾臓を,1%
(W/V) ヘモグロビン含有シスチン・ハート・アガー培地に塗布して,25℃2週間,培養したところ細菌が分離された。分離された細菌4株について,16S
rRNAの塩基配列を決定したところ,先に決定したイサキの細胞内寄生細菌の16S rRNAの塩基配列と一致した。
図2 分離菌を用いた感染実験.
分離された細菌の一菌株を,日本産イサキ人工種苗
(約10g)
の腹腔内に,10の4〜7乗CFU/尾で注射したところ,細菌濃度に応じて7-19日でほぼ全数が死亡した。死亡魚からは同様と思われる細菌が再分離され,イサキ細胞内寄生細菌特異的と考えられるプライマーによるPCRを行うと,すべてが陽性反応を示した。よって,ヘモグロビン含有シスチン・ハート・アガー培地を用いて,イサキの細胞内寄生細菌の分離・培養が可能であることが示された。