簡便な「試験用配合飼料」の作り方

水産研究・教育機構 増養殖研究所
養殖システム研究センター
飼餌料グループ長 山本 剛史

 地域で生じる農産・食品副産物の利用性,他魚種で有用と言われている飼料添加物などを,ちょっと試してみたいという時,「自分で試験飼料を作るのなんてできっこない」とお考えの方も多いかと思います。
 ところが,欲を言わなければ,構造が複雑かつ高価で,取り扱いに熟練が必要な専用の飼料製造装置がなくても,簡単な方法で,「それらしきモノ」は作れますし,現在でも栄養・飼料研究の現場では,そのような方法で研究に必要な飼料を作ることも多いです。
 ここでは,少ない投資で「試験飼料」を製造することができる2つの方法を紹介します。なお,簡単と言っても,それなりの「コツ」はありますので,詳しくは当グループまでお問い合わせ下さい。

1. 飼料の原材料の入手,粉砕,撹拌・混合

 飼料の主原料(魚粉,大豆油粕,小麦粉,油脂類など)は,配合飼料を取り扱っている代理店などから入手可能と思います。ビタミンやミネラルなど,微量な成分については試薬級のものを購入して調整しますが,メーカーに外注することも可能です(ただし,単位が大きい)。一般的な飼料組成や微量成分の配合割合などが不明な場合は当方へお問い合わせ下さい。
 飼料原料によっては微粉砕されていないものがあり,供試魚のサイズや製造するペレットの大きさによっては粉砕する必要があります。量が少なければ乳鉢や卓上の粉砕機でも可能ですが,まとまった量であれば専用の粉砕機が必要な場合もあります。
 製造する飼料の量が少なければ,原則的に配合量の少ないものから乳鉢などで混合していきます。量が多ければ適当な撹拌装置を使用します。すべての原料を混合・撹拌後,ペレットに成型する直前に水を30%前後加えてさらに混合・撹拌します。

←粉砕機による大豆油粕の粉砕

混合撹拌機による飼料原料の混合・撹拌→

2. ニンニク絞り器による造粒

 1つの飼料の製造量が2kg程度までなら,ホームセンターなどで購入可能なニンニク絞り器が投資も少なく適当と思われます(ただし,体力が必要)。水を加えて餅状となった飼料をニンニク絞り器に入れ,ペレットの長さだけ押し出してはナイフでカットする作業です。ペレットの直径は絞り器の穴の大きさによるため,あまり大きな径のペレットはできません(2mm前後)。ペレットの長さはナイフでカットする際に調整できる分,以下のミートチョッパーによる造粒よりメリットがあります。

←ニンニク絞り器(円形で肉厚のものが好ましい)

ニンニク絞り器での造粒→

3. ミートチョッパーによる造粒

 ある程度まとまった量の飼料が必要な場合は,ミートチョッパー(ひき肉を作る機械。10万円程度〜)が便利と思います。水を加えて餅状となった飼料を少しずつ機械に投入し,一旦ヌードル状に成型して乾燥させます。乾燥後,手で揉みほぐすか杵突きの要領で粉砕したものを篩いにかけてサイズを揃えます。ミートチョッパーのプレート(押し出す穴が多数開けられたもの)の種類を揃えることで,ペレットの直径を調節することが可能です。

←ミートチョッパーによるヌードル状成型

乾燥後粉砕してサイズを揃えた試験飼料→

4. 乾燥

 熱に弱い成分の効果を検討する場合には真空凍結乾燥が必要になる場合がありますが,通常は適当な乾燥機を用いて乾燥させます。熱乾燥の場合,長時間の加温はビタミン等のロスになりますので,60℃で数時間乾燥させ,水分含量が10%以下となるようにします。

 以上,簡単に説明しましたが,不明な点などはお気軽にお問い合わせ下さい。「習うより慣れろ」の精神で,一度お試し下さい。

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