生物餌料サブバンクの紹介(3):シオミズツボワムシ
動物プランクトンのシオミズツボワムシ(以下ワムシ)は、ツボワムシ科の代表的な汽水種です。ワムシは多くの海産魚介類の仔稚魚期に必須の餌料として、各地の種苗生産・試験研究機関で培養されています。私たちは大量培養に適した様々なタイプのワムシ株を長期間安定的に継代しており、要望に応じて以下の5種類の株を有償配布いたします。対象とする仔稚魚のサイズや水温等に合わせて、適切な株をお選び下さい。個々の株の詳細や培養方法等については、お気軽にお問い合わせください。
SS型タイ株 Brachionus rotundiformis

本株は5株の中では最小の株で、特にふ化仔魚が小型で口の小さいハタ類(キジハタ、マハタ、クエ等)の最初の餌として活用されることが多いです。本株は高水温で培養されることが多いですが(種株は5株の中で最も高い水温で管理しています)、培養不調の事例も散見されるため、管理には注意が必要です。大量培養時に時々オスが出現します(培養には影響ありません)。
S型八重山株 Brachionus koreanus

本株を含むS型株は、一般的に培養が容易なこと、高密度でも安定的な培養が可能なこと、およびSS型株やL型株に比べて培養不調になりにくいこと等から、様々な魚介類の種苗生産や試験研究に広く活用されています。5株の中では、最も培養が容易だと思われます。
L型小浜株 Brachionus plicatilis ”Nevada”

本株は低水温でも遊泳・増殖すると言われており(種株は5株の中で最も低い水温で管理しています)、低水温に生息している魚介類(異体類やズワイガニ等)の種苗生産や試験研究に活用されることが多いです。大量培養時に稀にオスが出現します(培養には影響ありません)。本株を含むL型株の培養は、総じてS型株よりも困難と言われています。
L型奄美株 Brachionus plicatilis sensu stricto

本株はブリ、クロマグロ、アユ、および甲殻類等の様々な魚介類の種苗生産や試験研究に活用されています。L型小浜株と比べて、高水温での魚介類の種苗生産や試験研究に適していると言われています。
L型能登島株 Brachionus plicatilis sensu stricto

本株は2020年4月から配布可能となりました。他のL型2株よりも一回り大きく、5株の中では最大です。現在のところ、外部機関への配布実績は乏しい状態ですが、1億個体規模での長期間(3ヶ月間)の培養実績、ベニズワイガニ幼生への初期餌料としての有効性、およびトラフグ種苗生産の好成績等を確認しています。

一般的な大量培養条件下における有償配布5株の携卵個体の平均サイズ

  被甲長と背甲長、被甲幅と背甲幅は、それぞれ同じ意味です。
被甲長と被甲幅は、ワムシの状態、水質、餌等により変化します。